使用の本拠と保管場所

 こんにちは、行政書士さくら事務所の前島です。

 

 今日は、ちょっと前に車庫証明業務について受けたご相談からの話題です。

 地図で測ってみたら自宅と車庫の間が約2.9km離れているみたいだけど大丈夫か?というご相談でした。

 

 結論から言えば、これでは原則として申請は通りません。

 なぜか?形式的な理由と実質的な理由をお話します。

 

 まず、形式的には自動車の保管場所の確保等に関する法律(車庫法)第3条と同法施行令第1条第1号に根拠となる条文があります。

 

法第3条(保管場所の確保)

 自動車の保有者は、道路上の場所以外の場所において、当該自動車の保管場所(自動車の使用の本拠の位置との間の距離その他の事項について政令で定める要件を備えるものに限る。~中略~)を確保しなければならない。

 

施行令第1条

 自動車の保管場所の確保等に関する法律(~中略~)第3条の政令で定める要件は、次の各号のすべてに該当することとする。

第1号

 当該自動車の使用の本拠の位置との間の距離が、2キロメートル(~中略~)を超えないものであること。

 

 上記の条文があるために、使用の本拠と保管場所は直線距離で2km以内でなければならないのです。

 そうは言っても、なんで2km以内って決まっとんじゃ?困ってんねん!と言いたい方もいるかもしれません(笑)

 

 そこで、次に実質的な理由をお話しましょう。

 使用の本拠と保管場所が離れているということは、車を使って出かける際には行きも帰りも歩いて移動しなければなりませんよね。直線距離で2kmというと実質的な道のりは2.4kmぐらいになったりします。標準的な80m/分で計算すると30分かかる場所です。

 これを超えてしまうと一般的な人の感覚からすれば、保管場所まで歩いていくのが面倒になります。私個人的には、雨の日のことを考えると100m離れていてもイヤです(笑)自宅の玄関と車庫の間の5mでも雨の日はクソッ!と思いながら乗り込むぐらいなので(笑)

 

 そうすると使用の本拠と保管場所がとても離れている場合はどのようなことが想像できるでしょうか。

 そう。自宅前の道路を車庫として停めるようになったり、近くに管理されていない空き地・空き家やお店や公園の駐車場を自分の車庫として使い始めたくなりますよね。

 警察としては、道路を車庫として使われることは避けたいので直接的に法律で禁止していますし、使用権原のない駐車場を車庫として使われたらいずれ施設の管理者から警察に苦情が寄せられることもあるので避けたいわけです。

 

 ところで、かつては上記の施行令に定められた距離要件は「道のりで500m」でした。

 ところが、都市部ではバブル期に地上げを原因とした土地不足、地方でも一家に1台の時代から一人に1台の時代になり駐車場の確保が難しくなってきたんですね。駐車場を確保できず車庫証明を取れなければ自動車の登録ができませんから、販売店さんも購入者さんも困ってしまったわけです。

 そこで、現在の「直線距離で2km」というものに緩和されました。

 

 このような経緯もありますから、自動車を購入する際はなんとかして2km以内に駐車場を見つけてください。販売店さんも早く契約したい気持ちを抑えて、適法な保管場所を用意するようにアドバイスしてあげてくださいね。